いわきスポーツ【週2回(火・金曜日)読売新聞・福島民友に折り込み】に平成19年2月16日から5回続きで掲載された、「福島高専ホープスの誕生から現在まで」の連載です。

1回目 平成19年2月16日 第259号

2回目 平成19年2月23日 第261号

3回目 平成19年3月 2日 第263号


4回目 平成19年3月 9日 第265号

5回目 平成19年3月16日 第267号

ゴールデンゴールズいわき大会御礼文 平成19年3月30日 第270号
「試合ができる喜びから勝つ喜びへ」
 
  「福島高専ホープス」の創設には幾多の障害がありましたが、たくさんの方々の御支援があり、それらを乗り越え社会人野球に参戦できることになりました。しかし、社会人野球への参戦は決まったもののいざチームを運営していくとなると、すぐさま金銭面など現実的な部分で新たな課題が噴出しました。
念願の初優勝を目指して笑顔を爆発させる選手たち

社会人野球の大会に出場するには、登録費や大会参加費などの経費の他、県内各地で行われる試合に出場するための交通費、宿泊費がかかります。また社会人野球は高校野球と違い、木製バットを使用するため、試合や練習で折れてしまえば、また新しいバットを買わなければならず、年間に要するチームの運営費は相当に大きな額となります。社会人野球への加盟にあたっては、学校からの金銭的な支援は一切なく、学生が主体のチーム構成では、この金銭面が大きなネックとなりました。解決の糸口を探っていた時、あるサッカークラブがサポータークラブを言う名の応援組織を立ち上げ、年会費を会員から徴収し、チーム運営をしているというニュースを耳にしました。これまでも競技種目は違うものの、基礎トレーニング方法やスポーツ栄養学などのサッカーの優れた部分を積極的に取り入れていたので、このサポータークラブ方式もすぐに取り入れることにしました。
こうして、ホープス創設から遅れること約1ヶ月、「ホープスサポータークラブ」と称した「福島高専ホープス」の応援組織が立ち上がりました。主な目的は運営費を集めるためですが、当然、誰でも意味も無くお金を払ってはくれるはずがありません。会員になっていただくには、チームの活動理念や指導方針を明確にし、少しずつ認知してもらえるよう一生懸命活動していく以外ありませんでした。徐々にチームの活動趣旨に賛同され、会員となっていただく方も増え、年間に要する運営費にもおおよその目安がついてきた頃には、ホープスにとって初めての公式戦となる都市対抗野球福島県大会を迎えようとしていました。
ホープスの創設から約2ヶ月で初めての公式戦を迎えることになりましたが、準備不足が顕著でチームの骨格も出来上がっていないまま、都市対抗を迎えてしまいました。都市対抗までに行った10数試合の練習試合でも、見事に1試合も勝てず、誰もが自信を持てずに不安いっぱいで迎える初めての公式戦となりました。そんな中、独特の緊張感と前日から降り続いている雨の影響で本来のリズムさえ出せないまま試合が始まりました。終始相手にリードを許す苦しい展開となり、結局、初陣を2対6で落とす結果となりました。以降の公式戦であるクラブ選手権大会、日本選手権でも初戦敗退となり、社会人野球参戦の一年目は1勝もできないまま、シーズンを終えることになりました。
一年を振り返った時、私自身がみんなで野球ができ、大会に出場できることだけに満足していたような気がしました。社会人野球に参戦という、当初の大きな目標を達成し、次の目標を見出せないまま、一年を過ごしてしまったように思えました。そう思えたとき、このままでいいのか自問自答し、選手に投げかけました。選手と話し合い、考えた末に、私も選手達も一緒に成し遂げたい、「勝つ喜び」という目標を立てました。
目指す目標ができればあとは、それに向って進むだけです。選手達とともに徹底的に勝てなかった理由を洗い出し、次に勝つためにはどうしたよいのかを具体的に項目立て、実現可能なメニューを作りました。それはあくまで机上の空論でしたが、選手達の意識が確実に変わったのは間違いありませんでした。  
誰もが試合に勝つんだという、一つの明確な目標を携え二年目のシーズンを迎えました。選手達は確実に昨年とは比べ物にならないぐらいの成長を遂げていました。それは「勝つ」という目標を掴んだ強みなのでしょうか。しかもその「勝つ」という意識がチーム全体に浸透して、みんなが同じ方向に向って一致団結して野球に取り組んでいました。特に最上級生である5年生は就職試験や進学の受験勉強、その他に卒業研究と野球以外にも忙しい時期を迎えていましたが、チーム全体の雰囲気に後押しされ、個人の心の弱さを戒めることができ、己に厳しく毎日を送ることができていたように思えます。それは時間を上手に使い、勉強と野球の両立を果たすという学生の本分を選手達は実践できていたのだと思います。
その選手達の姿に野球の神様が応援してくれたのでしょうか。二年目の都市対抗福島県大会では、記念すべき初勝利を収めることができたのです。その記念すべき勝利の場所は、二年前の夏の大会に「想いの力」で勝った、県営あづま球場でした。私も選手達の、あの福島商業戦以来の「勝つ」ということを味わえたのです。それはホープスの全員の「喜び」が"試合をできること"から、"試合に勝つこと"に変わった瞬間でした。
子供達の力は不思議なものです。久々に味わった「勝つ」喜びが、選手達に何倍もの急速な成長を成し遂げさせたのです。続く二回戦も、終盤の無死満塁という絶体絶命の大ピンチでセンターに上がった飛球をホームにレザービームのような返球で救うというプレーで勝ち、さらに三回戦では、昨年の優勝チームに勝利を収めるなど、誰もが予想だにしなかった快進撃を演じさせました。誰もが勝ちたいという一心だけを持ち、邪念や欲など持つことなくプレーしたことがこの快進撃を生んだのでしょうか。続く準決勝でも投打がかみ合い、初完封で勝ち、初めてづくしで決勝戦を迎えました。今振り返っても、実力は間違いなく他のチームより劣っていましたし、勝ち続けられたのは、巡り合わせというか球運というか、やはり「想いの力」だったのでしょう。みんなが「勝ちたい」と願い、その願いに向って歩んだ姿に、野球の神様が応援してくれたのだと思います。その目には見えない不思議な力で、創設二年目にして都市対抗野球福島県大会で優勝を果たすことができたのです。
 

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